骨折した高齢者は、転倒防止・骨強化の2点に取り組む

若者が骨折した場合、自動車事故が原因であれば、治療期間中は運転を慎重にしたり、自動車に接触しないよう道路の横断に留意する。高所作業に伴う転落が原因であれば転落防止策を立て直す。スポーツ中の骨折であれば体の動きを見直す、など骨折の原因を見直し・反省して改善しなければなりません。

一方、高齢者が骨折した場合は、骨折の原因としての転倒防止、骨強化の2点に取り組まなければなりません。

英国の友人は、骨強化に必要な検査代・薬代よりも安価に高齢者の骨折を減少出来る転倒防止を広めようと、1時間の家族・本人指導、1時間の住環境改善指導をしています。

このように転倒防止は高齢者骨折を防ぐのに有効ですので、転倒し易い高齢者には特に注意していただく必要があります。

転倒し易い高齢者の基準に、歩くスピードが遅い、過去1年間に転倒を1回以上経験した、といった高齢者が該当します。

また、視力・聴力が低下している、睡眠薬・精神科の薬を服用している、ふらつきに関係する高血圧・糖尿病の薬を服用している、頻繁に物忘れをする、脳卒中やパーキンソン病など神経系統の病気に罹患している、なども転倒し易い高齢者に属します。普段から裾の絡む和服を着たり、サンダル・草履など足元が不安定な履物を履く、といった状況も転倒をし易くします。

転倒は"さ"の付く5項目に注意

住む環境については、部屋の乱雑さ、眩しさ、段差、暗さ、寒さ、など "さ"の付く5項目が転倒をし易くしますので、体調、薬、衣服、住環境で易転倒者に該当する高齢者は特に転倒防止を図ってください。

骨を強くするのに有効な食事・運動を

若者とは異なり、高齢者では床で転んだだけで骨折をするほど骨が弱っていますので、骨強化が必要です。骨を強くするには骨粗しょう症を治す薬が有効ですが、それと等しいほど有効なのが牛乳などカルシウムの多い食事を摂る、ビタミンDの多い青い背の魚を食べる、ビタミンKの多い納豆や野菜を食べるといった食事療法です。

カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの3つの栄養素は骨作りのゴールデントライアングルとして重要です。

また、踵落とし(背すじを伸ばしてつま先立ちになり、かかとを交互にドシンと床に落とす運動)など骨に衝撃を加えるような運動をすると骨を強化できますので、日光を浴びて毎日歩くことが手軽な運動となり、皮膚でビタミンDが産生されますので一挙両得です。多くの骨粗しょう症治療薬は食事療法、運動療法の助けを得て効果を発揮しますので、食事・運動・日光浴からなる日常生活の3原則を守りたいものです。

2019.06.03公開 著者:原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史先生 編集:骨折ネット運営事務局(株式会社プロウェーブ)