骨折の治療法

骨折治療の基本は、折れた骨をもとの位置に戻し(整復)、固定することです。
きちんと固定し、固定を妨げるような外力をかけないようにすれば、ほとんどの場合は後遺症を残さずに治ります。
適切な治療が遅れたため治癒までに時間がかかったり、骨の変形が残ったり、あるいはくっつかないままになったりすることを避けるために、骨折においては正しい診断と適切な治療が重要です

整復の方法

折れた部位がずれていなければそのまま固定しますが、ずれている場合はもとの正常な位置になおすことが必要です。これを「整復」といいます。整復には痛みを伴うので、麻酔をして行うこともあります。

  • 徒手整復
    骨折部を、皮膚の上から医師の手を用いて整復する方法です。骨折した骨がずれている場合は、麻酔をして行います。
  • 牽引による整復
    ずれた骨を持続的に引っ張って正常な位置になおすために行われます。 折れた骨が、骨に結合している靱帯や腱、周辺の筋肉の力で引っ張られてずれ、正しい位置に保てないときの処置です。 重りのついた牽引装置で持続的に引っ張ります。 子どもの場合は、骨癒合が早いため、牽引だけで治癒することもあります。
  • 観血的整復
    皮膚を切開して、直接骨に力を加えて正常な位置に戻します。

固定の方法―外固定

  • ギプス固定
    ギプスの素材はグラスファイバーまたは石膏です。グラスファイバーのギプスは、強くて軽くて長持ちし、濡れても壊れないという特徴があり、現在のギプスの主流となっています。石膏のギプスは、細かな成形が必要な場合にのみ使用されます。 ギプスと骨折部の間には、皮膚を保護するために専用の綿を介在させています。

    ギプスの種類

    上腕のギプス
    (Hanging Castハンギングキャスト)

    前腕のギプス

    大腿のギプス

    下腿のギプス

    手指のギプス

    ギオプシーネ
    ギプス包帯を必要な長さと幅に折り重ね、帯状にしたものを、患肢(骨折した腕や脚)にあてて硬化させてたもの

    ギプスシャーレ
    ギプスを縦半分に切り、網包帯でカバーするもの
  • 副木(そえ木)固定
    副木とは、石膏、グラスファイバー、アルミニウムなどでできた細長い板のことで、シーネともいいます。 骨折した部位にあてて、弾性包帯やテープで固定します。 患部の腫れがひくまでの、骨折の初期治療によく用いられます。

    指の骨折

    手首・前腕の骨折

    肘の骨折

    上腕の骨折

    ひざ・脚の骨折

    足首の骨折

    足の甲の骨折

    指の骨折
  • その他の方法
    鎖骨の非転位骨折(骨折したところがずれていない骨折)で行われる固定法です。

    鎖骨バンド

    8の字包帯
    上腕骨や肘の骨折(ずれていない骨折)で行われる固定法です。

    三角巾固定
    上腕骨や肘の骨折を固定する方法です。
    しっかり固定したい場合は、腕をつったままさらに弾性包帯などよる固定を追加します。

固定の方法―内固定(手術)

麻酔をしたうえで皮膚を切開して、骨のずれを直接整復し、金属のピン、ワイヤー、スクリュー、プレート、ロッド(棒)などを用いて皮下で骨を固定します。
折れた骨をつなぐ手術を骨接合術といいます。
ピンやワイヤーなどに用いられる金属は、ステンレス、高強度金属、チタンです。最近は、感染に強く、MRIの撮影も可能なチタンの製品が増えています。

  • 内固定手術のおもな方法
    ピンニング Kワイヤー(キルシュナー鋼線)という先のとがった針金を骨に刺し、折れたとこ ろをつなげて固定します。 皮膚を切開せず、皮膚の上から直接刺す場合もあります。
    プレート固定 金属製のプレートを骨折部位にあて、スクリュー(ねじ)で骨にとめて固定します。皮膚を切開し、骨を露出させて手術を行います。
    髄内釘固定 骨の中心部にある髄腔に、骨端から金属製の長いロッド(棒)を打ち込みます。骨折部を切開せずに固定できます。
    大きな骨の骨幹部(中央部分)が折れたときに行います。
    骨折部周辺の軟部組織(筋肉や皮膚など)を傷めることなく、比較的早期に荷重(体重をかけること)ができるという利点があります。

固定の方法―創外固定(手術)

開放骨折※1、粉細骨折※2、関節部の骨折などで行われる固定法です。 骨折部位をはさんだ両側の骨に、ワイヤーまたはピンを数本打ち込み、骨のずれをできるだけ整復し創外固定器(金属の支柱)を連結して、骨折を皮膚の外で固定します。
感染の危険性が高い骨折部にまったく手をつけずに、正確な整復と強固な固定ができます。
また、いったん固定したあとからでも精密に整復しなおしできる利点があります。

※1 皮膚や軟部組織が破れ、その傷口から骨折した骨が露出した状態。複雑骨折ともいいます。
※2 骨がバラバラにくだけた状態。交通事故や転落により非常に大きな外力が加わったときに起こります。

痛みに対する治療
痛みは骨折の大きな症状のひとつであり、しっかりコントロールする必要があります。
痛みの強い炎症期にはアイシング(氷で冷やすこと)と鎮痛剤で痛みをやわらげます。
痛みがストレスとなり、ドーパミンという脳内物質が減って意欲を低下させることがわかっています。痛い時はがまんせずに医師や看護師に伝えましょう。
痛みを伝えるときは、ズキズキ、ジンジン、キリキリなどの擬態音を使ったり、10段階でいくつとあらわしてみたり、できるだけ具体的に表現しましょう。

治療後のリハビリ

骨折の治療では、整復、固定とともにリハビリが大きな柱となります。
筋肉をまったく動かさずにベッド上で安静にしていると、筋肉の重量は1日で約3%減少するといわれています。
固定中は筋肉の運動量が極端に減るため、固定をはずすころにはだいぶ筋肉量が減り、
筋肉が細くなっています。筋肉を増やし、その機能を回復させるリハビリは、早期から積極的に行うのが効果的です。
高齢者の場合は、骨折を機に介護が必要な状態になることもあるので、とくに早期からのリハビリが大切です。