~元気に歩こう! ロコトレ実践!

ロコモティブシンドローム(ロコモ)の予防・改善のためには、日々の運動がとても大切です。骨粗しょう症などの病気がある人や高齢の人でも、運動をすると筋力やバランス能力がアップして、いくつになっても元気に過ごせるようになります。毎日を活動的に過ごすために、今日からロコトレを始めてみましょう!

いくつになっても筋力やバランス能力はアップできる!

骨や関節、筋肉などの運動器に障害があると、歩いたり立ち上がったりといった基本動作がスムーズにできなくなってしまいます。だからといって体を動かさないでいると、運動器は衰えてバランス能力なども低下してしまいます。

運動器の衰えを抑えロコモを予防するには、なるべく早い段階からトレーニングを始めることが大切です。高齢であっても、適切なトレーニングで骨や筋肉を鍛え、バランス能力を向上させることはできます。

日本整形外科学会はロコモの予防と改善のために、「ロコモーショントレーニング(通称ロコトレ)」(日本整形外科学会 2011年度版ロコモパンフレットより)を勧めています。トレーニングといってもそれほどきつい運動ではなく、短い時間で簡単に行えるものです。基本となるのは「開眼片脚立ち」と「スクワット」の2つ。この2つの運動を継続的に行うことで、筋力とバランス能力がつき、運動器の衰えを抑えることができます。

ただし、運動器に障害がある人や骨や関節などに病気がある人は、無理をすると悪化することがありますので、まず医師と相談をするようにしましょう。運動器の状態は人それぞれです。ロコモの重症度は主に歩行の状態によって判断され、それにより運動の方法も異なります。無理をせず安全で自分に合った運動を続けていくことが大切です。

転倒骨折予防のためにしっかり歩ける筋肉をつけよう!

しっかりと歩くためには、下半身に十分な筋肉が必要です。この下半身の筋肉の強化に有効なのが「開眼片脚立ち」という運動です。

まず、机やイスなどの横に立ち、顔をまっすぐ正面に向けます。そして、片脚を上げて立った状態を1分間保ちます。これを左右の脚で交互に2~3回ずつ行います。足は、床に着くか着かないかの高さで、大きく上げる必要はありません。転倒しないように、近くにつかまることができる物があるとよいでしょう。

この運動は片脚で体を支えるので、筋力だけではなくバランス能力も鍛えられ、歩いているときに転倒しにくい体になります。また、骨にも刺激が加わるので、骨を強くすることもできます。

ふらついて転びそうになったら、足をついてもう1度バランスをとってからやり直しましょう。一人での歩行が困難な人は、誰かに見守ってもらいながら机に両手を置いてできる範囲で行ってみましょう。両手では運動が軽すぎると感じられる人は、指だけをついて行っても構いません。

立ち上がりが楽になる筋肉をつけよう!

「立つ」、「歩く」、「座る」といった動作は、日常生活で最も基本の動作です。日常生活動作で使う筋肉を、総合的に鍛えることができる運動が「スクワット」です。

まず、ふらついたときにすぐおしりをつけるようにイスやソファの前に立ちます。そして、足を肩幅ぐらいに開き、つま先は少し外側に向けます。この姿勢からイスに腰かけるようにゆっくりとおしりを下ろします。このときに膝がつま先より前に出ると、太腿に筋肉の鍛えられ方が不十分になるので、つま先が膝より前に出ないように注意しましょう。おしりを下ろすときは、深呼吸をするようにゆっくり息を吐きながら下ろし、立つときには息を吸います。これをゆっくりとしたペースで、5~6回繰り返します。

痛みがあるところまでおしりを降ろす必要はありません。自分ができる範囲で、膝を曲げる角度を30~45度程度に調整しましょう。痛みがあるときや支えが必要な場合は、机に手を置いて行っても大丈夫です。基本のスクワットが難しい人は、いすに座って前方の机に手を置き、おしりをわずかに浮かす動作を繰り返すだけでも効果があります。

この運動を行うと筋力やバランス能力がついて、立ち上がりが楽にできるようになります。また、軽度の膝の痛みがある人では、痛みを和らげる効果もあります。

こんな運動をプラスして効果をさらにアップ!

ロコトレを行うと、「歩く」「立ち上がる」といったことがしっかりできるようになり、日常の基本動作が安定します。「○時になったらロコトレの時間」、というように自分が行いやすい時間を決めて、できるだけ毎日こつこつ行うことが大切です。

ロコトレに慣れてきたら、他にもいろいろな運動を取り入れてみましょう。ラジオ体操やウォーキング、水泳などをすると、筋力はさらにアップします。また、ロコトレと一緒にストレッチや関節の曲げ伸ばしなども行うと、筋肉や関節がしなやかになって動きがスムーズになります。

ロコモは40歳代から始まります。若い人でもなるべく早くから運動を習慣にし、ロコモを寄せ付けない体づくりをしましょう。

食事もロコモ予防の大事な要素

骨や筋肉は食事からつくられます。運動器を丈夫に保つには、栄養のバランスがとても重要です。

まず、大切なのが骨の材料となるカルシウムをしっかり摂ることです。カルシウムが不足すると、骨が弱くなって骨粗しょう症が起こりやすくなります。小魚や乳製品、大豆製品、青菜、海藻など、カルシウムが多く含まれる食品を意識して摂るようにしましょう。同時に、カルシウムの吸収を助けるビタミンDや、骨の形成を促すビタミンKを摂ることも大切で、カルシウム、ビタミンD,ビタミンKの3つの栄養素を骨作りのゴールデントライアングルと言われています。ビタミンDは鮭、さんま、うなぎなどの魚類や、干ししいたけやきくらげに多く含まれています。ビタミンKは納豆、チーズなどの発酵食品や緑黄色野菜、牛乳などに豊富なので、カルシウムに加えてこれらも一緒に摂るようにしましょう。

もうひとつ、栄養で大切なのがたんぱく質です。たんぱく質は筋肉をつくり、骨の材料にもなります。特に高齢になると小食になりがちで、たんぱく質が不足しやすくなります。コレステロールを気にして動物性たんぱく質を敬遠する人もいらっしゃいますが、肥満や糖尿病がある人以外は、動物性たんぱく質もしっかり摂ることが大切です。動物性たんぱく質を摂ると転倒しにくい体をつくることができるので、魚や大豆製品以外にも、肉、卵、乳製品などもバランスよく食事にとり入れましょう。

さらに効率的にたんぱく質を体にとり込むためには、ごはんや麺類などの炭水化物も一緒に摂ることが大切です。エネルギー源となる炭水化物を摂らないと、せっかくたんぱく質が十分でも、エネルギー源として使われてしまい、筋肉や骨の材料にたんぱく質が回らなくなってしまいます。

バランスのとれた栄養たっぷりの食事と運動ではつらつとした体を目指しましょう。

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