骨折はこんなきっかけで起こる

手首:転んで手をついたときに折れやすく、閉経前後の女性にも多い

つまづいてとっさに手をついたときに、骨折しやすいのが手首の骨です。

手足の骨は長管骨(腕、太ももからすね、手や足の指などにある細長い骨)でできています。長管骨は細くても強度を保つため、硬い皮質骨でできていますが、端の部分は関節の動きがスムーズになるように膨らんでおり、空洞の多い海綿骨が多く含まれています。そのため、長管骨の端にあたる手首の骨は骨折が生じやすくなるのです。

手首を骨折すると、手首の関節が腫れたり、食器のフォークのように変形したりすることがあります。また、折れた骨で神経が圧迫されると、指がしびれることもあります。

手首の骨折は、女性では骨量の減る閉経前後から起こりやすく、50歳代で生じるケースもよくみられます。手首を骨折すると、その後に脚のつけ根(大腿骨近位部)の骨折をおこしやすいこともわかっています。女性は閉経前から早めに対処をして、骨密度の減少を食い止めることが骨折予防につながります。

腕のつけ根:衝撃で折れると生活に支障が起こりやすい

転んだ拍子にひじや肩をつくと、折れやすいのが腕のつけ根(上腕骨外科頸部)です。この部位は骨が弱くなりやすい上に、力学的にも力が集中しやすいので、骨密度が減ると折れやすく、骨折すると激しい痛みがおこり、肩が動かせなくなります。脱臼を伴うこともあり、場合によっては手にしびれや感覚の障害が生じることもあります。

腕のつけ根の骨折は、脚のつけ根や手首の骨折よりは少ないものの、高齢になるほどおこりやすくなります。主に転んで肘を打ったときに骨折することが多く、手術や骨折した部位から下を4~6週間ほどギプスで固定する治療が必要になります。この部位は血流がよく、骨がくっつき(癒合)やすいので、固定をしている間は立ったり歩いたりといった動作を積極的に行って、足腰の働きを保ちながら治療を進めることが大切です。

また、骨が癒合した後、肩の関節が動かせなくなるために、関節が硬くなって動きが悪くなる「拘縮(こうしゅく)」が生じやすくなります。肩関節を動かせるようになったら、肩を温めたり、肩関節の動きをスムーズにする運動をすることが、拘縮治療には欠かせません。具体的には、膝を曲げて深くおじぎをするような姿勢で腕を前後に振る運動や、痛みが軽くなったらアイロンなどの重みのあるものを持って腕を前後に振る運動なども1つの方法です。

このような運動を行わないとその後に肩の動きが悪いままになってしまうことがあるので、医師や理学療法士の指導のもとしっかり行うようにしましょう。